2011年8月8日月曜日

[レビュー][本]アメリカはなぜ日本に原爆を投下したのか

せめてこの時期くらいは、戦争、平和に関する本でも読もうと思う。また、読んでも忘れてばかりなので、ちょっとアウトプットしとことうと。

タイトル:アメリカはなぜ日本に原爆を投下したのか
著者:ロナルド・タカキ
発行年:1995年

内容は表題のとおりで、アメリカ内部の立場、トルーマン大統領、政府関係者、科学者、アメリカ国民が、1945年という時代にどんな背景、思想、偏見などをもって、原爆投下に至ったのかを分析しています。

私なりに端的にまとめると、
秘密裏に原爆開発に投じた莫大な予算の正当性を、官僚や政府関係者が戦後に示すために投下が必要だった(1)。軍上層部は、戦後にソ連との対立を想定し、有利な環境にしておきたかった(2)。建前は、日本本土上陸作戦でアメリカ兵士50万人や日本人犠牲者を減らすために、早期に降伏させるのに必要だった(3)。トルーマン大統領は決断力のあるオトコらしいところを見せたい性格だった(4)。科学者は、ドイツに先んじて原爆を開発すべきと考えたが、開発後、市民への投下は容認できなかった(5)。アメリカ国民は、原爆を知らず、投下を非難している(6)。

発刊も1995年だから、今(2011年)読んで、特に目新しいことはない。

(1)については、米国では特に、大統領や政府の対応を事後に議会が批判して、政権交代が起こることが多いようなので、止めるに止められないプロジェクトが官僚により推進されるのかなぁと思う。今の日本でも、事業仕分けなど行政改革で結果責任を問われる状況になっているので、コストパフォーマンスや責任追及のありかたについて考えさせられた。

(4)について、1945年という時代の米国では、祖父がカウボーイ気質、家庭では黒人奴隷を使役している人種偏見が残っているなかで、帝国主義が終焉し、正義や自由を主張しはじめた頃の、矛盾する思想が入り乱れていたのだろうと想像できる。そんな中で、劣等感のコンプレックスがあったトルーマンが1945年4月に突然、大統領に就任し、強硬派のバーンズ国務長官にのせられ、直後、原爆という大量殺戮兵器を手に入れるという、歴史は残酷だと思う。

(3)について、降伏を迫るのなら、広島へ投下後、なんで状況把握や降伏の会議をする暇もない3日のうちに、長崎へ投下したのか理解できない。天気などの軍事的条件もあったかもしれないけど、投下の理由が喪失してるのではないか。軍に影響力の強い科学者が人体実験の意味で複数回投下をさせたように、みえる。


民主主義のなかでは、内部にいろんな立場、思想の人がいることを、考えるのには読んでおくべき一冊だったと思う。Amazonのオススメも役立った。

また、第2次大戦の惨劇の時系列で覚えておくべきと思ったのは、
ドイツ(のナチス)は、ホロコースト、ベルリン空襲で「市民」を標的にした。
日本は、開戦通知なし(諸説あるが)に、真珠湾の「軍事施設」に奇襲した。
アメリカは、無警告で原爆を「市民」に2度も投下した。

総力戦の時代だったし、そもそも日本に、相手国の市民を標的にする兵器がなかったとも言えるが。


著者は日系アメリカ人なので中立な立場という仮定なんだけど、なんとなく、アメリカ国民や科学者は原爆反対だったという言い訳のために出版したようにも読めるのがなぁ。

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